私は2022年に、セキスイハイムで家を建てました。
もともと、家を建てること自体に強いこだわりがあったわけではありません。「新築の家で、妻と子どもと穏やかに暮らせればそれでいい」。2021年に第一子が生まれたことをきっかけに、そんなささやかな夢を描き始めました。
子どもが生まれると、それまで「なんとなく将来のこと」として後回しにしていた住まいの問題が、急に現実として目の前に迫ってきます。当時住んでいた賃貸のアパートは、家族3人で暮らすには少し手狭で、毎月払う家賃がそのまま消えていくことへの焦りも感じていました。「どうせ払うなら、自分たちの家のローンに充てたい」という気持ちが、少しずつ膨らんでいきました。
友人や職場の同僚が次々と家を建て始める年齢でもありました。SNSには誰かの「マイホーム完成」の投稿が流れてきて、無意識のうちに焦りを感じていたのかもしれません。「自分たちも、そろそろ動かなければ」という気持ちが、じわじわと大きくなっていきました。

しかし、現実は甘くありませんでした。
当時の住宅業界は、ウッドショックによる建物価格の高騰の真っただ中。 理想よりも「予算」という現実を突きつけられていた私は、いつの間にか「どんな家に住みたいか」ではなく、「いくらで建てられるか」という計算ばかりをするようになっていたのです。
複数のハウスメーカーの展示場を巡るたびに、「素敵だな」と感じる家はあっても、見積もりを見ると現実との乖離に打ちのめされる——そんな繰り返しでした。夢を語る前に電卓を叩く。そんな家づくりが続いていました。展示場のモデルハウスは輝いて見えるのに、見積書を開くたびに現実に引き戻される。あの落差は、なかなかしんどいものでした。
義父からの、あまりに魅力的な提案
そんなある日、妻の父から声をかけてもらいました。
「家の隣の畑に建てればいいよ。土地代はかからないんだから」
正直に言えば、喉から手が出るほどありがたい話でした。 土地代が浮けば、その分を建物に回せる。手が届かないと思っていた「名のあるハウスメーカー」で建てることも夢ではない。

「これなら負担も少なく済むし、家族も喜ぶはずだ」
義父とはもともと関係も良く、この時点では将来への不安など微塵も感じていませんでした。むしろ、「最高の解決策が見つかった」とさえ思っていたのです。義父の提案は、私たちの悩みをそっくりそのまま解決してくれるような、まるで魔法のような言葉でした。妻も喜んでいましたし、周囲の友人に話すと「いいじゃないか、羨ましい」と言われることが多く、その言葉がさらに私の背中を押しました。
土地代が浮いた分で、断熱性能にこだわれる。設備を少しグレードアップできる。念願の対面キッチンにできる。そんな計算が頭の中で広がって、気づけば「妻の実家の隣に建てる」ことが、最初から決まっていたかのように思えてきていました。
お金の影に隠れてしまった「小さな違和感」
でも今、当時を振り返ると、心のどこかに「本当にこれでいいのだろうか?」という小さな、けれど消えない引っかかりがあったのも事実です。
- 義実家のすぐ隣で、本当にプライバシーは保てるのか?
- 「土地をもらう」ということは、一生この場所から逃げられないということではないか?
- 何か問題が起きたとき、義両親との関係はどうなるのだろうか?
- 妻の兄弟や親族との関係に、何か影響はないのだろうか?
そんな不安が頭をよぎることもありました。 しかし、当時の私はその違和感に蓋をしました。目の前にある「土地代無料」という圧倒的なメリットを前に、心の警報を無視してしまったのです。
人間は、自分が見たいものだけを見ようとする生き物なのかもしれません。「うまくいく理由」は積極的に集め、「うまくいかないかもしれない理由」はそっと棚の上に乗せてしまう。当時の私がまさにそうでした。義父との関係が良好だったことも、「だから大丈夫だ」という根拠のない自信に変換されていました。
結果的に、私は自分の直感よりも「お金」を最優先にする選択をしました。 この時の決断が、のちに自分の人生を縛り付ける「見えない鎖」になるとも知らずに……。
「正解」だと思っていたあの頃の自分へ
このブログを書いている今、2022年の自分に何か言えるとしたら、こう伝えたいと思います。
「お金の問題は確かに大事だ。でも、それだけじゃない。毎日をどんな気持ちで過ごすか、誰とどんな距離感で生きていくか——それも、家を選ぶときの大切な基準だよ」と。
当時の私には、その視点が欠けていました。コスト最優先で動いた結果、見落としていたものが大きすぎたのです。35年という長いローンを組むということは、それだけ長い時間、その選択と向き合い続けるということでもあります。毎月の支払いだけでなく、毎日の生活の質、家族関係、精神的な安定——そのすべてが、その選択に影響を受け続けます。
妻の実家の土地に家を建てることが、必ずしも悪い選択だとは思いません。うまくいっているご家庭もたくさんあるはずです。ただ、私のように「お金のメリット」だけに目を向けてしまうと、気づかないうちに大切なものを見落とすことがあります。
この経験が、同じように悩んでいる誰かの参考になれば、このブログを書いている意味があると感じています。
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