前回の記事「断熱性能は正直あまり意識していなかった|UA値0.51・C値1.6の鉄骨住宅に住んだ本音」の最後に、次は断熱材について書くとお伝えしました。
今回は、その断熱材の話です。種類と熱伝導率、そしてあまり語られていない「熱抵抗値」という数字について書きます。この熱抵抗値を知っておくと、各ハウスメーカーの基本性能を自分で数値化して比べられるようになります。
断熱材にはどんな種類があるのか
住宅で使われる断熱材には、主に次のようなものがあります。
- グラスウール
- ロックウール
- 硬質ウレタンフォーム
- ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
- フェノールフォーム
- セルロースファイバー
名前だけ並べられても、どれが良いのか分かりませんよね。この優劣を判断するのが熱伝導率という数字です。
熱伝導率とは|味噌汁を鉄の器と木の器に入れたら
熱伝導率とは、熱がどれだけ早く伝わるかを表したものです。
イメージしやすい例を挙げます。熱い味噌汁を、鉄の器と木の器に入れたとき、どちらの器が早く熱くなるか——考えるまでもなく、鉄の器です。
つまり鉄は木より熱伝導率が高い。熱をどんどん伝えてしまう。逆に木の器は熱くなりにくい。これが「熱伝導率が低い」という状態です。
断熱材に求められるのは、もちろん木の器の側です。
ここだけ押さえてください。
熱伝導率は数値が小さいほど、熱を伝えにくい=断熱性能が高い。単位は W/(m・K) です。

この中で最も熱を伝えにくい、つまり断熱性能が高いのはフェノールフォームで約0.02。逆にセルロースファイバーは約0.04で、この並びの中では数値が大きいほうになります。
「調湿機能」「防音機能」は、断熱材を選ぶ理由になるか
ここで一つ、私の考えを書いておきます。
セルロースファイバーは調湿機能がある、グラスウールは防音機能があると言われます。確かにそういう性質はあるのでしょう。でも私には、どうしても後付けの説明に聞こえてしまいます。
というのも、断熱材はあくまで「熱を断つ」ための素材だからです。そこが本来の役目であって、調湿も防音も、結果としてついてきた副次的な性質にすぎません。
熱伝導率で見れば物足りない断熱材に、別の長所を足して魅力的に見せる——そういう説明のされ方をしているケースは少なくないと感じます。
湿気が気になるなら換気計画で、音が気になるなら窓やサッシ、間取りで対策したほうが確実です。断熱材に求めるのは、まず断熱性能。この優先順位を見失わないでください。
熱伝導率より大事かもしれない「隙間なく施工できるか」
ここが、カタログだけを見ていると見落とす部分です。
熱伝導率が優れた断熱材を使っていても、それを隙間なく施工できなければ意味がありません。断熱材と柱のあいだ、配線まわり、コンセントの裏——こうした場所に隙間ができると、それは断熱欠損と呼ばれる状態になり、そこから熱が逃げていきます。
どれだけ性能の高い断熱材を選んでも、施工に隙間があれば、その家の断熱性能は設計値どおりには出ません。

吹付断熱は断熱欠損が起こりにくい
この点で有利なのが吹付断熱です。
現場で発泡させながら吹き付けていくため、複雑な形状でも隙間なく充填できます。施工自体も難しくないので、職人の腕による差が出にくく、断熱欠損が起こりにくいという利点があります。
断熱材の「種類」を比べるときは、熱伝導率の数字だけでなく、その断熱材が現場で隙間なく入るのかどうかまでセットで考えてみてください。
あまり語られない「熱抵抗値」という数字
そしてここからが、私が一番お伝えしたい話です。
断熱材の性能を語るとき、たいていは「種類」と「熱伝導率」で止まります。でも実際の家の性能を決めるのは、もうひとつの要素——厚みです。
その両方をまとめて数値化したものが熱抵抗値です。計算式はとても単純です。
熱抵抗値 = 断熱材の厚み(m) ÷ 熱伝導率
こちらは数値が大きいほど、熱を通しにくい=高性能です(熱伝導率とは逆なので注意)。
実際に計算してみる
たとえば一条工務店のグランスマート。硬質ウレタンフォームを厚み0.19m(190mm)、熱伝導率0.021で使っています。
0.19 ÷ 0.021 = 約9.05
同じ一条工務店でもアイキューブになると、EPS1号相当で熱伝導率が0.031になります。
0.19 ÷ 0.031 = 約6.12
厚みは同じでも、断熱材が変わるだけでここまで差がつきます。「種類」と「厚み」を別々に見ていては気づけない差が、一つの数字になって見えてくるわけです。
各社を並べてみると、差がはっきり分かる
同じ計算を、私が検討した他のメーカーでもやってみます。

- 一条工務店 グランスマート:9.05(硬質ウレタンフォーム 190mm)
- 一条工務店 アイキューブ:6.12(EPS1号相当 190mm)
- セルコホーム:4.67(高性能グラスウール32K 140mm)
- セキスイハイム(私が購入した時期):2.77(高性能グラスウール16K 100mm・熱伝導率0.036)
注目してほしいのは、アイキューブの6.12という数字です。グランスマートと比べると見劣りしますが、他のハウスメーカーと並べるとこれでもかなり高性能だということが分かります。
私が検討していたセルコホームは高気密高断熱を売りにしているメーカーです。それでも4.67。そして私が実際に建てたセキスイハイムは2.77でした。
こうして並べて初めて、自分の家がどのあたりに位置しているのかが分かります。営業トークの「うちは高断熱です」という言葉だけでは、絶対に見えてこない部分です。
※各社の仕様は年度や商品によって変わります。検討する際は、必ず最新の仕様書で厚みと熱伝導率を確認してください。この2つさえ分かれば、誰でも電卓で計算できます。
断熱等級にこだわるより、UA値そのものを見る
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
断熱等級は便利な目安ですが、等級という「枠」にこだわりすぎないほうがいいというのが私の考えです。大事なのはUA値が実際にいくつなのかです。
というのも、断熱等級には「幅」があるからです。
等級5は「UA値0.60以下」。そして0.46以下になると等級6になります。つまり「等級5」と呼ばれる家のUA値は、0.47から0.60までのあいだに散らばっているということです。

この幅の意味を、両端で考えてみてください。
- UA値0.60……ギリギリで等級5に入った家。すぐ隣はもう等級4です。等級5を名乗ってはいますが、中身は限りなく等級4に近く、正直に言って寒いです。
- UA値0.47……あと0.01で等級6という家。同じ等級5でも、体感はまるで違います。
どちらも、カタログやチラシには同じ「断熱等級5」と書かれます。ラベルだけを見ていては、この差はまったく見えません。
だから「等級5です」という説明で納得せず、「UA値はいくつですか」と聞いてください。等級というラベルではなく、実数で比べる。それだけで判断の精度が大きく変わります。
そして私の実感としては、断熱等級6、あるいは等級6に限りなく近いUA値が出ていれば、等級7まで求めなくても十分な性能の家になります。
等級7は確かに素晴らしい性能ですが、そこを目指すとコストは一気に上がります。「等級7でなければダメ」ではなく、「等級6のラインにどこまで近づけるか」——この考え方のほうが、現実的で納得のいく家づくりになると思います。
まとめ|断熱材選びで見るべき3つのこと
長くなったので、整理します。
- 熱伝導率を見る … 数値が小さいほど高性能。フェノールフォーム0.02〜セルロースファイバー0.04
- 隙間なく施工できるかを見る … 断熱欠損を防げるか。吹付断熱は有利
- 熱抵抗値(厚み÷熱伝導率)を計算する … 各社の基本性能を自分で数値化できる
そして断熱等級というラベルではなく、UA値という実数を聞くこと。
前回の記事に書いたとおり、私は家を建てた当時、断熱をそこまで意識していませんでした。だからこそ思うのですが、これらは難しい知識ではありません。厚みと熱伝導率を聞いて、割り算をするだけです。それだけで、カタログの言葉に流されずに各社を比べられるようになります。
次回は、日射取得について書きたいと思います。断熱材や数値の話とは別に、土地や間取りの段階で太陽の光をどう取り込むかを考えると、家はもっと快適になります。そのあたりの話です。