一条工務店と仮契約を結んでから、1ヶ月。 親族間の話し合いは、泥沼のまま一歩も前に進んでいませんでした。
そのやり取りを傍観しながら、私はある強烈な「空気感」を感じていました。 関わっている全員が、「問題の根本がどこにあるのか」を知っている。なのに、誰もそこに触れようとしない——。
そんな歪な空気が、ずっと漂っていたのです。 「本当にこれは解決するのだろうか」 「自分に、何かできることはないのか」
焦燥感に突き動かされた私は、一つの賭けに出ることにしました。
「誠意」という名の、たった一言の欠如
親族たちが求めていたものは、金銭的な条件以上に、結局のところ「誠意」でした。 「自分の娘のため、愛する孫のために、どうかお願いします」 その一言があれば、事態は動くはずだと私は感じていました。
しかし、プライドが邪魔をして下手に出ることができない義父を見ていると、このままではその思いは一生伝わらないだろうと確信したのです。
そこで私は提案しました。 「言葉を“会話”ではなく、“手紙”に変えませんか。そして、その手紙を私に書かせてください」

私は仕事柄、文章で思いを伝えることには多少の自信がありました。 「誠意さえ伝われば、きっと道は開ける」 そんな淡い希望を抱いていたのです。
解決した土地問題と、消えない「影」
手紙の内容をここで詳述することはできませんが、以下のような思いを綴りました。
- 対面では素直になれず、手紙という形になった非礼への謝罪
- これまでの至らなさと、親族への敬意
- 何より、娘(私の妻)と孫のために力を貸してほしいという切実な願い
義父はあまり乗り気ではありませんでしたが、「これで解決するなら」と渋々承諾してくれました。
結果、この手紙は膠着状態を打ち破りました。 「娘と孫のために」という言葉が、頑なだった親族の心を動かしたのです。ついに全員のサインが揃いました。

「よかった」「これで一安心だ」 妻も義両親も、手を取り合って喜んでいました。
しかし、その歓喜の輪の中で、私一人だけが拭い去れない「冷めた感情」を抱えていたのです。
「なぜ、私がここまでしなければならなかったのか」
今振り返ると、激しい疑問が湧き上がります。 なぜ、赤の他人である私が、これほどまでの危ない橋を渡らなければならなかったのか? なぜ、彼らが解決すべき問題を、私が肩代わりしたのか?
この労力を、全く別の選択肢(土地を自分で買う、等)に向けていれば、今の苦しみはなかったのではないか……。
それでも、当時の私たちは「これでようやく家づくりに専念できる!」と、目の前の勝利に酔いしれていました。
私は意気揚々と、一条工務店の担当者に電話をかけました。 「土地のサインが、すべて揃いました!」

しかし、その電話の先に待っていたのは、さらなる「想定外の事態」だったのです。
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