注文住宅を建てるとき、多くの人が一番悩むのが「間取り」ではないでしょうか。せっかく自由に設計できるのだから、理想の暮らしを実現したい——誰もがそう考えると思います。
しかし我が家の場合、妻が望んでいた間取りは実現しませんでした。そしてその原因は、他の誰でもない私自身にあります。これは、私の家づくりにおける最大の過ちのひとつです。

妻が望んでいた間取り
まず、妻がどんな間取りを希望していたのかをお話しします。妻の理想は、1階に「家事がラクになる設備」をすべて集約した間取りでした。具体的には次の4つです。
- ファミリークローゼット(家族の服をまとめて収納)
- ランドリールーム(洗濯・部屋干し・たたむ作業を一か所で)
- パントリー(食品・日用品のストック収納)
- シューズクローゼット(玄関まわりをすっきり)
そしてこれらが、家事楽動線としてつながっていること。洗濯物を洗って、干して、たたんで、しまう——その一連の流れが最短距離で完結する間取りです。今思えば、毎日家事をする人にとって、これ以上ないほど理にかなった希望でした。
理想を叶えるには「1階18坪」が必要だった
では、この希望を叶えるにはどれくらいの広さが必要なのか。いろいろなハウスメーカーに図面を描いてもらいましたが、答えははっきりしていました。
これだけの部屋を1階に配置するには、少なくとも1階だけで18坪が必要だったのです。

一方、私がこだわったのは「耐震等級3」
対して、私がこだわっていたのは耐震等級3でした。家族の命を守る家にしたい。その思い自体は、今でも間違っていなかったと思っています。
ただ、耐震性能を高くしようとすると、構造上「総二階」(1階と2階が同じ大きさの家)になることが多くなります。1階を18坪確保して総二階にすると、建物は少なくとも35坪以上になってしまう。
そして当時、35坪で名のあるハウスメーカーとなると、金額は3,500万円を超えてくる——これが現実でした。
「予算オーバーしたくない私」と「理想を叶えたい妻」
ここで、私たち夫婦の意見は真っ二つに割れました。
予算をオーバーしたくない私。思った通りの間取りにしたい妻。
当時の私の頭の中は、お金のことでいっぱいでした。ウッドショックで建築費が高騰していた時期でもあり、「これ以上予算を上げるわけにはいかない」という思いに完全に支配されていたのです。
結果、私の希望だけが通った家になった
最終的にどうなったか。
私が希望していた耐震等級とメンテナンス性能は採用され、妻が希望していた間取りは採用されませんでした。そして皮肉なことに、それでも予算は中途半端にオーバーしたのです。
つまり——ほとんど私の希望だけが通った家になってしまいました。
妻の一言で、初めて気づいた
恥ずかしい話ですが、私はこのことに、家が建つまで気づいていませんでした。
家が完成したあと、妻に言われたのです。
「私の希望通りにはなってない。パパの希望だけ通っている」
その言葉を聞いて、私は初めてハッとしました。予算、耐震、土地の問題、義父との関係——あまりにいろいろなことを一度に考えすぎて、人の意見を聞き入れる余力がなくなっていたのだと思います。
妻を説得したつもりでいましたが、実際には「納得させた」のではなく「諦めさせた」だけだったのです。
なぜ私は、そこまでお金にこだわったのか
今になって振り返ると、なぜあそこまで予算に固執したのか、自分でも説明が必要だと感じます。
当時はウッドショックの真っただ中で、建築費が目に見えて上がっていく時期でした。打ち合わせを重ねるたびに見積もりが膨らみ、「このままではどこまで上がるのか分からない」という恐怖が常にありました。そこに土地の名義の問題や義父との関係のストレスも重なり、私の心には余裕がまったく残っていなかったのです。
住宅ローンは35年です。「毎月これだけ返し続けられるのか」という不安は、決して的外れなものではありませんでした。だからこそ私は、数字で管理できる「予算」と「性能」にしがみついたのだと思います。不安が大きいほど、人は目に見えるものにすがってしまう。今ならそう理解できます。
「性能」と「暮らしやすさ」は、対立させるものではなかった
もうひとつ反省しているのは、私が「耐震等級」と「妻の間取り」を、どちらか一方しか選べないものとして扱ってしまったことです。
本来なら、両方を成立させる道を一緒に探すべきでした。1階に優先順位をつけて絞る、2階の面積を調整する、設備のグレードで金額を調整する、ハウスメーカーの選択肢をもっと広げる——今考えれば、探せる余地はあったはずです。
それなのに私は、「予算的に無理だから」の一言で議論を終わらせてしまいました。選択肢を探す前に、諦める理由を先に見つけてしまったのです。これは性能や予算の問題ではなく、私の姿勢の問題でした。
まとめ|間取りの後悔は、お金の判断から生まれた
間取りの後悔というと、「収納が足りない」「動線が悪い」といった設計上の失敗を思い浮かべる方が多いと思います。でも我が家の場合、間取りの後悔の正体は、私自身の判断の誤りでした。
家づくりでは、性能も予算も大切です。しかし、毎日その家で暮らし、家事をするのは誰なのか——その視点が、当時の私からは完全に抜け落ちていました。数字で測れる「耐震等級」や「金額」ばかりを見て、数字にならない「暮らしやすさ」を軽く見てしまったのです。
そして、この選択がもたらした影響は、間取りだけにとどまりませんでした。では、どうすればよかったのか。そのことについては、次の記事で詳しくお話ししたいと思います。